えびす祭りは商売繁盛の神様として知られるえびす様を祀る祭りで、主に商売繁盛と漁業の守護神である恵比寿(えびす)神を祀る祭りです。恵比寿神は、七福神の一柱であり、日本の民間信仰において非常に重要な存在です。えびす祭りの起源は非常に古く、平安時代にまで遡るとされています。えびす祭りは全国各地で行われていますが、関西には一年を通して様々なえびす祭りが開催されます。しかしえびす祭りに関しては、その起源や風習に多くの謎が残されていることをご存知でしょうか?今回は、えびす祭りにまつわる謎について詳しく探っていきます。
『えびす祭りの謎①関西の代表的なえびす祭り』
関西の代表的なえびす祭りは、えびす神を祀る総本社として知られている兵庫県西宮市にある西宮神社です。毎年1月10日に行われる「十日えびす」では、全国的に有名な「開門神事福男選び」が行われることで有名です。これは、表大門から本殿までの約230メートルを駆け抜ける競争で、最初に到達した者がその年の「福男」として称えられます。この行事は毎年多くの参加者と観客を集め、ニュースでも取り上げられるほどの人気です。
京都市にあるゑびす神社でも、十日えびすが行われます。京都ゑびす神社は、日本三大えびす神社の一つとして知られ、西宮神社や今宮戎神社と並んで多くの参拝者を集めます。京都ゑびす神社の福娘は、東映京都撮影所の女優さんから選ばれ、舞妓さんが福笹の授与などを行います。福娘とは、十日えびす祭の際に舞台で舞を披露する女性のことを指します。彼女たちの美しい舞は祭りの重要な見どころとなっています。
福娘は、 京都の芸妓組合から現役の有名な芸妓が選出されます。 芸妓に加えて、時代物の能楽の舞を演じる「仕舞姿(しまいすがた)」の女性も福娘に選ばれます。一般の方から公募で選ばれるのではなく、京都の伝統芸能を体現する芸妓や舞踊家から厳選された方々が福娘を務めます。芸事の素晴らしさや艶やかな衣装、上品な振る舞いなど、最高の技量と振る舞いが求められる名誉ある役目となっています。
京都らしい品格と格式を体現する存在として、福娘は十日えびす祭の醍醐味の一つとなっています。
大阪市にある今宮戎神社も、日本三大えびす神社の一つであり十日えびすが盛大に行われます。開催期間は 毎年1月9日から11日で大阪最大規模のエビス祭りで「福娘選び」などのイベントが有名です。その今宮戎神社の福娘は、いつごろからあるのでしょうか?調べてみると、福娘が始まったのは、1953年(昭和28年)から。その歴史はとても古く、実に60年以上を数えます。そして福娘は、毎年多数の応募の中から、選考によって決めらます。気になる福娘の選考倍率は、過去最高で75倍(2021年はコロナ禍であったにも関わらず65倍!)。満18~23歳までの未婚の女性(高校生は不可)40人が福娘になれるのですが、毎年約3,000人もの応募があるそうです。
福娘になるためには、非常に狭き門を突破しなければならないことがわかりますね。
十日戎の三日間、福娘の皆さんはおそろいの着物と千早に身を包み、頭には金の烏帽子をつけてご奉仕しています。
これらのエビス祭りは、それぞれの地域で特色ある儀式やイベントが行われ、多くの参拝者を迎えています。関西地区のエビス祭りを巡ることで、地域ごとの伝統や文化を体感することができるでしょう。
『えびす祭りの謎②えびす神の謎』
エビス神は、古くから日本の神話や伝承に登場する神ですが、その正体については多くの謎があります。えびす様は元々「恵比須」「戎」とも書かれ、その名の由来には諸説あります。一説には「漂着神」であるえびす様は、海から流れ着いた神であり、そのためエビス神は古代の海神であり、漁業や航海の守護神として崇められていたとされています。そのため、えびす様の象徴である鯛や釣り竿は、豊漁や商売繁盛の象徴として重要な意味を持っています。
えびす神の正体についての説として、もともとは印度伝来の富をもたらす神であったと言う説もあります。なぜか日本に伝わった頃から恵比寿大黒天と合体しました。
大黒天は悪疫を払い福徳を招く神であり、二柱そろって七福神のメンバーとなりました。えびす神は商売繁盛を、大黒天は広く一般の願いごとを叶えると位置付けられ、人々に広く信仰されるようになりました。
さらに、蛭子命(ひるこのみこと)という説は、日本神話に登場する蛭子命と同一視するしいうもの。夷(えびす)説は古代に日本列島に渡来した異民族を指す「夷」と結びつける説など、しかしどの説も決定的な証拠がなく、えびす様の正体は未だに謎に包まれています。
『えびす祭りの謎③えびす祭りの起源の謎』
えびす祭りの起源もまた、はっきりと特定されていません。歴史的には、平安時代には既にえびす信仰が存在していたことが確認されており、室町時代には商工業者を中心に広く信仰されるようになりました。江戸時代には、各地でえびす講と呼ばれる組織が結成され、商売繁盛を祈願する行事が盛んに行われるようになりました。
起源に関する有力な説としては、 古代の人々が豊漁を祈願して行った祭りが発展したとする説。市場で商売繁盛を祈願する祭りとして始まったとする説。
などが挙げられます。いずれの説も、えびす様が人々の生活に深く根付いていたことを示しており、祭りのルーツを探る上で重要な手がかりとなります。
『えびす祭りの謎④えびす祭りの風習の謎』
えびす祭りで行われる風習も、地域によって様々です。代表的なものとしては、福笹授与、福男選び、宝恵駕籠行列などがありますが、その由来や意味合いには、多くの謎が残されています。
福笹は、商売繁盛の縁起物として、えびす祭りで授与されます。笹の葉には、神様の力が宿るとされており、家に飾ることで、福を呼び込むことができると信じられています。
しかしなぜ福笹なのでしょうか?えびす祭りで授与される福笹には、商売繁盛の願いが込められています。その背景に、笹は冬でも枯れないことから、生命力や繁栄の象徴とされています。また笹の葉の音は、神様への祈りを伝えるとも言われています。
さらになぜ熊手がつきものなのか?えびす祭りで販売される熊手は、「福をかき集める」という意味があります。熊手の歯の数が多いほど、多くの福をかき集めるとされています。そしてそもそもなぜ十日戎なのでしょう?
十日戎は、1月の10日に行われるえびす祭りです。10日は、「とうか」と読み、「十日戎」と「とおかいり(遠いところからいらっしゃい)」をかけていると言われています。
しかし、そもそもなぜ笹の葉が選ばれたのか、その理由は定かではありません。
福男選びは、西宮神社で行われる有名な行事です。開門と同時に、本殿まで走り、一番先に到着した人がその年の福男となります。この行事は、江戸時代から続いていると言われていますが、なぜこのような形で福男を選ぶようになったのか、その起源は不明です。宝恵駕籠行列は、京都ゑびす神社で行われる行事で、芸妓や舞妓が、駕籠に乗って街を練り歩きます。この行事は、江戸時代中期に始まったとされていますが、その目的や意味合いについては、様々な説があり特定されていません。