忍者は、多くの日本人にとっては映画やテレビ、漫画、小説、ゲームなどで幼い頃から身近な存在でした。忍術は人々の想像力を刺激し、多くの日本人だけではなく最近では世界の人々をも魅了しています。
しかし、そもそも忍者はどのような歴史を歩んできたのか、その詳細について実は知らないことだらけです。日本の歴史や文化において、忍者は謎めいた存在なのです。忍者の活動は、戦国時代の日本において特に盛んでしたが、その存在は秘密主義とされていたため、公式な文献や記録はほとんど存在しないのです。忍者に関する伝承や口承、忍術の書物や絵巻物などが僅かに残っているだけです。
忍者の活動や技術に関する情報は、伝承やフィクションと現実の区別が難しい場合もあります。今回は謎多き「忍者」を巡る、謎学のスタートです。
『忍者の謎①忍者のルーツは?』
忍者の歴史については諸説あり、はっきりとわかってはいません。
一説によると聖徳太子に仕えた「大伴細入(おおとものほそひと)」が「志能便(しのび)」という称号を聖徳太子から与えられたことが忍びという言葉と忍者の始まりだという説があります。
大伴細入は、優れた武芸と諜報活動の才能を持っていたとされ、そのことから忍術の始祖とされています。
日本の歴史において、忍者は暗殺術や諜報活動を通じて、戦国時代から江戸時代にかけて影の戦士として活躍しました。特に関西地区は、忍者の活動が盛んだった地域として知られています。
その中でも代表的なものが「甲賀忍者」と「伊賀忍者」の二つの流派が関西地区に根付いたことです。甲賀忍者は滋賀県の甲賀地方に、伊賀忍者は三重県の伊賀地方に拠点を置いていたとされています。これらの地域は山岳地帯であり、自然の地形が忍者の活動に適していたと考えられています。
忍者は伝統的な武士の戦闘スタイルからは外れる戦術や技術を駆使し、奇襲や裏工作などの手段を用いて任務を遂行しました。関西地区においても、伊賀組や甲賀組といった忍者集団は、戦国大名からの雇用や依頼に応じて活動していました。
忍術は伝説のような超能力ではなく、敵陣に潜入して情報を収集する技術、敵対する人物を密かに殺害する技術、 敵に見つからないように行動する技術などのことと言われます。これらの技術は、厳しい訓練と高度な知識によって習得されました。忍者は、優れた身体能力だけでなく、観察力、忍耐力、情報収集能力、演技力など、様々なスキルを必要としていたのです。
しかしながら、忍者のルーツや詳細については明確な証拠が乏しく、多くが伝承や口承によって伝えられています。忍者の活動は秘密裏に行われ、彼ら自身もその存在を隠すことが求められたため、記録や文献が少ないことが原因として挙げられます。また、忍者活動は一般的に非合法であったため、公式の文書にはほとんど言及されていません。
『忍者の謎②伊賀甲賀と忍者の関係とは?』
忍者の中でも特に有名なのが、伊賀流と甲賀流という2つの流派です。伊賀流は滋賀県の伊賀地方を拠点とし、甲賀流は滋賀県の甲賀地方を拠点としていました。
忍者は、三重県伊賀地方と滋賀県甲賀地方が忍者の発祥地として名高く、江戸時代の地誌「近江輿地志略」には「忍者(しのびのもの)伊賀甲賀と号し忍者という」とあり、忍者は「伊賀、甲賀の者」が代表格とされてきました。
始祖を忍術伝書に求めると、「忍法(にんぽう)秘巻(ひかん)」には平安時代末期の伊賀(服部)平内(へいない)左衛門(ざえもん)家長(いえなが)を始祖としています。
伊賀流は、山岳地帯の厳しい環境の中で独自に発展した忍術です。山岳戦や情報収集に特化した技術を持ち、高い身体能力と忍耐力が求められました。
甲賀流は、伊賀流よりも古い歴史を持つと言われています。甲賀流は、忍術だけでなく、武芸や医術なども含めた総合的な武術体系として発展しました。
伊賀流と甲賀流以外にも、関西地区には様々な忍者集団が存在していました。例えば、大和国(現在の奈良県)の柳生流や、丹波国(現在の京都府)の根来流などが有名です。
『忍者の謎③忍者が姿を消したのはなぜ?』
江戸時代になると、忍者たちは次第に表舞台から姿を消していきます。これは、徳川幕府による厳しい統治と、太平の世になったことで、忍者たちの活動の需要がなくなったことが原因と考えられます。
戦国時代の終焉とともに、忍者の需要は減少しました。統一された国家が形成され、中央集権的な政府が台頭すると、忍者のような非公式の戦闘員や工作員の必要性は減少しました。また、銃火器の普及や戦術の変化も忍者の役割を脅かしました。これらの要素が重なり、忍者は次第に衰退していきました。
忍者は昭和30年代以降、小説などに使われて普及した呼称で、優れた武芸だけでなく、超常的な能力を持つ存在として創作(講談・小説、映画・テレビドラマといった映像作品、漫画・アニメ・ゲーム)に多数取り上げられ、その名は日本国内にとどまらず、世界的にも Ninja(ニンジャ)として知られています。