古都京都を中心に、歴史と文化が息づく名庭園が数多く存在する関西地区。
近年、日本を訪れる外国人観光客数(インバウンド客)の増加とともに関西地区を目指すインバウンド客も増え続けています。観光の目的に、最近では多くの人が日本庭園を挙げます。今、日本庭園は世界的なブームを迎え、その静寂と美が多くの人の心を捉えています。国内外で日本庭園の来園者数は増加傾向にあり、海外の個人邸宅でも日本庭園風のカーデニングがブームとなっています。
多くの人々を魅了する日本庭園の魅力は、単なる植物の集積した場所ではなく、自然の風景を巧みに取り込み、日本の美意識を表現した芸術作品です。枯山水や借景などの伝統的な技法は、限られた空間の中に奥深い世界を創り出し、見る人の想像力をかきたてます。近年、和食やアニメなど日本の文化が世界的に注目される中で、日本庭園への関心も年々高まってきています。
これらの庭園には、それぞれに深い謎や物語が秘められています。今回は、代表的な関西名庭園の謎を詳細に紐解き、その魅力を探っていきたいと思います。
『関西名庭園の謎①京都・龍安寺の石庭の謎とは?』
龍安寺(りょうあんじ)の建立は宝徳2年(1450年)です。「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されています。龍安寺の建立は宝徳2年(1450年)。
国の史跡・特別名勝に指定されている方丈庭園、いわゆる「龍安寺の石庭」は、日本を代表する枯山水庭園です。しかし、その美しさとは裏腹に、石庭には幾つかの謎があります。まず石庭の作者、作庭時期は未だに不明です。
石庭は、25 メートル×10 メートルの長方形です。 その中に、異なるサイズの 15 個の石が、5 つのグループに分けて配置されています。東から5個、2個、3個、2個、3個の合わせて15の大小の石が配置され、石の周囲は白い砂利で囲まれ、 庭にある植物は石の周りの苔だけです。
石庭は、縁側に座って鑑賞することを目的としていますが、 石は見る角度によって14個や16個に見えてしまうことがあります。これは、作庭者が視覚錯覚を利用した巧妙な作庭を行ったためと考えられています。
石庭の意図については、様々な解釈があります。枯山水庭園は、禅の思想を表すものとされていますが、石庭が具体的に何を表しているのかは、明確ではありません。
これらの謎は、石庭の魅力の一つとなっています。訪れた人は、それぞれの解釈で石庭を楽しむことができます。
龍安寺では、石庭の謎を解き明かす「謎解きツアー」が開催されています。ツアーでは、石庭に隠された秘密や、謎を解くためのヒントを教えてもらうことができます。
『関西名庭園の謎②淡路島・巨石が並ぶ旧益習館庭園の謎とは?』
淡路島の中央東岸に位置する洲本は、江戸時代に洲本城のお膝元として栄えた地。
今もなお城下町時代に整備された碁盤目状の町割が残る、美しい場所です。この洲本の曲田山(まがたやま)の麓にひっそりと佇むのが、洲本城の城代を務めていた徳島藩筆頭家老稲田氏の私邸庭園として江戸時代前期に作庭された『旧益習館庭園』です。
一見、典型的な池泉回遊式庭園に見えますが、そこには幾つものこれは何だ?という謎が隠されています。
庭園最大の謎とも言えるのが、なんと言っても庭園に配置された巨石群です。山側護岸に用いられた石は高さ4メートル、幅5.8メートルの巨石であり日本最大級の大きさで圧倒的な存在感を放っています。また庭園の西側には高さ4mの石灯篭がそびえるにも驚かされます。これらの巨石は、庭園に変化を与え、景観をより美しく見せるために配置され違和感はないのですが、それにしても大きすぎます。
なぜこのような巨石庭園が誕生したのでしょうか?
洲本の歴史を遡ると、洲本市は古墳時代から良質な石材を産出する地として知られてきました。江戸時代には、洲本の石材は「淡路石」と呼ばれ、大阪城や姫路城などの石垣に使用されました。また、明治時代以降は、墓石や建築材料としても広く使われるようになりました。
旧益習館庭園は、洲本の城下町を整備した際に石材を切り出していた石切場の跡地を再利用して作庭された庭園なのです。
庭園の巨石には、今も石を切り出すためのクサビを一列に打ち込んだ痕である「矢穴」を見ることができます。
さらに旧益習館庭園は、ところどころに岩盤が露出する曲田山の斜面を利用して築山を造成しており、山から流れ込む水を引いた園池を設けています。正面には大滝(雄滝)を、その右側には小滝(雌滝)を組み、築山の上部には中心石(守護石)を据えています。 いずれの石組も石切場で産出された巨岩の自然石をふんだんに用いており、そこに人工的に形を整えた石を護岸として配し、他の庭園にはない極めて自然の壮大さを再現した独自の庭園景観を造り出しています。
旧益習館庭園は回遊して観賞することができる「池泉回遊式庭園」として築かれており、園池の周囲を歩いて周ることができ、巨石越しに見る回廊からの庭園も楽しめます。