有馬温泉は、兵庫県神戸市北区にある日本三古湯の一つです。ちなみに日本三古湯とは、愛媛県松山市の道後温泉と和歌山県西牟婁郡白浜町の白浜温泉、そして兵庫県神戸市の有馬温泉のこと。
日本三古湯の中では、道後温泉が日本最古の温泉地として知られています。その歴史は、古事記や日本書紀に記述が残っていることから推定すると約1,300年前にまで遡ります。道後温泉の源泉は、地下1,200mから湧き出ており、泉質は単純泉。白浜温泉は、和歌山県西牟婁郡白浜町にある温泉です。日本三古湯の中では1200年前と新しい温泉です。白浜温泉の源泉は、地下1,000mから湧き出ており、泉質は道後温泉と同じ単純泉です。
さて有馬温泉は、兵庫県神戸市にある温泉です。その歴史は、奈良時代の記述から推定すると約1,300年前と道後温泉とほぼ同じですが、道後温泉の記述が古事記で有馬温泉の記述が日本書紀ということで日本最古は道後温泉になっています。有馬温泉の源泉は地下1,000mから湧き出ており、金泉と銀泉の2種類があります。
金泉は、赤茶色でとろりとした濁り湯が特徴です。海水の約1.5倍の塩分を含んでおり、保温・保湿効果が高く、筋肉痛や関節痛、神経痛などに効能があると言われています。さらに、鉄分が多く含まれており貧血や冷え性にも効果的とも言われています。
銀泉は、無色透明のさらりとした湯で、炭酸やラジウムを含んでいます。しかしなぜ、有馬温泉には二種類の源泉が湧き出ているのでしょう?実は有馬温泉、火山性のマグマとは関わりなく湧き出している温泉であることはあまり知られていません。
『有馬温泉の謎①周りに火山がないのになぜ温泉が?』
日本の温泉の多くは、近くに火山のある火山性です。ところが、有馬温泉やその周辺の宝塚、武田尾、神戸の灘温泉は火山性ではなく、有馬型温泉とよばれる特徴ある非火山性温泉地帯です。
有馬型温泉の特徴は①高温の温泉が湧き出ていること。②泉質が塩化物泉や炭酸水素塩泉であることとされています。
では火山性ではない有馬型温泉はどのように誕生して、温泉水が地上まで届くメカニズムとは?その答えは、日本列島を支える太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの4つのプレートが大きく関わっています。
有馬温泉の地下には、フィリピン海プレートが沈み込む過程で生成された高温の海水が存在しています。この高温海水がプレート内部の熱によって加熱され、高温高圧の状態で地下水と混ざり合い有馬温泉の温泉水を作り出していると考えられています。
火山性温泉の泉質は、マグマや熱水の成分によって大きく異なりますが、有馬温泉はプレートの熱によって海水が熱せられたプレート直結型の温泉という珍しい温泉で、泉質には海水が通過する地層の成分が大きく影響しています
『有馬温泉の謎②二種類の泉質があるワケとは』
有馬温泉は、非火山性ですので火山性温泉の特徴である硫黄臭や酸性度がほとんどありません。また、火山性温泉に多く含まれるメタケイ酸などの成分も少ないため、肌に優しく、美肌効果が期待できる温泉であるため、湯治場として古くから愛されてきました。
なぜ有馬温泉には、金銀二種類の泉質が湧き出しているのでしょう?有馬型温泉の金泉と銀泉の2種類の泉質は、地下水が通過する地層の成分が大きな役割を果たしていると言われています。
金泉は、鉄分と炭酸を多く含む泉質です。鉄分は、地下水が地層を貫通する際に、地層中の鉄分を含む鉱物と反応して溶け込みます。また、炭酸は、地層中の石灰岩や方解石などの炭酸塩鉱物が熱によって分解して生成されます。
金泉は、鉄分と炭酸が混ざり合うことで、赤茶色の濁り湯となります。鉄分は、血行促進や美肌効果があるとされ、炭酸は、疲労回復や美容効果があるとされています。
では銀泉はというと、ラジウムと炭酸を多く含む泉質です。ラジウムは、地層中のウランやトリウムなどの放射性物質が崩壊する際に生成されます。また、炭酸は、金泉と同じように、地層中の石灰岩や方解石などの炭酸塩鉱物が熱によって分解して生成されます。銀泉は、ラジウムと炭酸が混ざり合うことで、無色透明でさらりとした湯となります。ラジウムは、血行促進や美肌効果があるとされています。また、炭酸は、疲労回復や美容効果があるとされています。
有馬温泉には、金泉と銀泉の中間の泉質である「金銀混泉」も存在しています。一度、お試しになってみたら如何ですか。
『有馬温泉の謎③湧出量の謎』
しかし有馬温泉には、未だ解明されていない謎が残されています。その一つは、源泉の湧出量が常に一定であるという謎です。有馬温泉の源泉は、年間を通して湧出量がほとんど変化しません。これは、地下深くから海水が混ざり込んで形成されているためと考えられています。
『有馬温泉の謎④美容成分の謎』
また有馬温泉の湯には、鉄分や炭酸、ラドンなどの成分が含まれており、これらの成分が美肌効果に関係していると考えられています。しかし、有馬温泉の湧出量と美肌効果について詳しいメカニズムは未だに解明されていません。
最後に
有馬温泉は、有馬高槻構造線と呼ばれる活断層の上に位置しています。この活断層は、大阪北部地震の震源としても知られています。つまり、有馬温泉は、地震が起きるからこその希少な温泉でもあるのです。地震は、自然の脅威であり、恐怖の対象でもあります。しかし、地震によって生み出された温泉は、人々の心身を癒し、健康を回復させてくれるのです。これからも、人々の心身を癒す、かけがえのない温泉であり続けることでしょう。