mysteryjourney
関西地区、特に京都・奈良には、奇妙で不思議な要素を持つ神社やお寺がいくつか存在します。その中でも今回は、京都伏見稲荷大社についての謎をご紹介いたします。
特に
・伏見稲荷神社はとはそもそもどんな神社なのか
・千本鳥居が誕生した背景とは?
・参道がなぜ二筋に分かれているのか
について深堀していきます。
謎①京都伏見稲荷大社とはそもそもどんな神社なのか?
伏見稲荷大社は,京都市伏見区深草に位置し,日本各地に約4万社あるといわれる稲荷神社の総本社です。稲荷大神と呼ばれる神様が祀られています。京都伏見稲荷大社の創建は、711年とされています。伏見稲荷大社は、もとは農耕の神様として祀られていましたが、中世から近世にかけて「商売繁昌・家内安全の神」として広く信仰されるようになりました。そのため、伏見稲荷大社は、古くから商人たちの信仰を集めてきました。後に貴族や武士にも信仰されるようになり、全国に多くの稲荷神社が建立されました。
伏見稲荷大社は全国にある稲荷神社の総本社であり、現在年間約3,000万人の参拝者が訪れる、日本を代表するパワースポットとなっています。
謎②千本鳥居が誕生した背景とは?
千本鳥居とは,伏見稲荷神社の参道に密集して建てられている鳥居です。
朱塗りの鳥居が二筋の参道に隙間なく立ち並び,トンネル状になっています。
この辺りは神が降りたつ地と言われており,現世から神のいる幽界と呼ばれる死後の世界との関門として、多くの鳥居が建てられたと考えられています。
千本鳥居が本格的に登場したのは1600年以降と言われ、その背景には以下のように諸説あります。
千本鳥居誕生説①参拝者の多さを全国に示すため
伏見稲荷大社は日本全国から多くの参拝者が訪れる、日本有数のパワースポットです。参拝者の数を示すために、伏見稲荷大社が鳥居を建てることで、人気の高さを表現したと言う説もあります。
千本鳥居誕生説②稲荷大神の使いである狐を象徴するため
稲荷大神は、五穀豊穣や商売繁盛などの神様として信仰されています。狐は、稲荷大神の使いとして知られており、稲荷大社には多くの狐の像が祀られています。鳥居は、狐の背中を象徴するものであり、稲荷大神の神徳を象徴するために、信仰上の理由から鳥居を建てるようになったという説もあります。
千本鳥居誕生説③願いが叶うお礼に奉納された
伏見稲荷大社は、商売繁盛や五穀豊穣などのご利益があるとして長く信仰され、昔から多くの参拝者が訪れてきました。そのうち願いごとが叶った参拝者が、感謝の気持ちを込めて鳥居を献ずることによって,願いが「通る」という語呂合わせから信仰が生まれ,願いが「通る」度に鳥居を大きなものに変えて奉納する風習が根付いた結果、現在のような千本鳥居が誕生したと考えられています。
今では、この説が最も有力な説として定着しています。
鳥居の数は,数え方にもよりますが,稲荷山全体で約1万基,そのうち千本鳥居は約800基といわれていますが、木製のため雨や風による影響を受けやすく,新陳代謝が激しいため,今では平均して1日に3本弱が新しく建てられたり,修理が行われています。
謎③二つの参道の意味とは?
千本鳥居は、朱塗りの鳥居が二筋の参道に隙間なく立ち並び,トンネル状になっています。鳥居が二筋の参道に,左右二本併行して立ち並べられたのには一体どのような理由があるのでしょうか?往路入り口と復路出口という単純なものではないようです。「二つの参道の謎」を探ってみましょう。
二つの参道の説①参拝者の利便性と願いをより叶えるため
伏見稲荷大社は、1600年以降商売繁昌の神として、多くの参拝客が訪れるようになりました。
このため、参道の拡張工事が行われ、参道が二筋に分かれ、それぞれの参道に、鳥居が左右二本併行して立ち並ぶようになったといわれています。
また千本鳥居は、参拝者の願いが叶うようにと、奉納されたものです。
そのため、千本鳥居が二筋に分かれて立ち並んでいるのは、参拝者の願いを、左右の鳥居に分けて叶えるためのものであるという説もあります。
具体的には、左の鳥居は、商売繁昌や学問の願い、右の鳥居は、家内安全や子孫繁栄の願いを叶えるものであるとも考えられています。
二つの参道の説②インド密教まで遡る仏教思想の反映
伏見稲荷大社は、基本的に稲荷大神という神を祀っているので神道の考え方を持っていますが、仏教の視点から見れば稲荷大神は大日如来と呼ばれる仏様と同一視されることもあります。
そんなところから伏見稲荷大社は、神道と仏教を融合させた思想である、両部思想によって成り立っているとも言われています。神と仏は、表と裏、現実と非現実、陰と陽など、二つの側面を持ち合わせた存在であると言う考えで、千本鳥居が二筋に分かれて立ち並べられているのは、この思想における「金胎二界」を表したものではとも考えられています。
金胎二界(こんたいにかい)を漢字で書くと神道の神を象徴する言葉と仏教の仏を象徴する言葉が使われています。
つまり、「金胎二界」とは、神と仏の二つの世界を意味する言葉となります。神と仏の二つの世界が、本来は一つのものであるという思想を表しているのです。
伏見稲荷大社の千本鳥居の二つの参道の背景には、神と仏は一体であるという考え方(神仏習合思想)ともいえる日本の精神世界が象徴されていること、インドの仏教思想(密教)が反映されていることなどを知っていると、千本鳥居を訪れた時に一段と印象深いものになるのではないでしょうか。